大林寺の六地蔵石幢 伊勢市古市町

室町後期

油屋騒動 

京の島原 江戸の吉原とともに三大遊廓のひとつと呼ばれた伊勢古市 
今ではその面影を残すものは多くありません 
安政八年(1796)古市の伎楼油屋で27歳の町医者孫福斎(まごふくいつき)が遊女お紺(16歳)への嫉妬から起こした刃傷事件が油屋騒動で 後に歌舞伎の演目にとりあげられたものが「伊勢音頭恋寝刃」です

伊勢古市の大林寺には油屋騒動の孫福斎とお紺の菩提を弔う比翼塚があります
お紺は文政十二年二月に享年49歳で亡くなりましたが その年の五月に『宝年菜種実』と改題した『伊勢音頭恋寝刃』が古市で初演されて大当りをとりました その際に福岡貢(孫福斎)を演じた四代目坂東彦三郎が建立したお紺の墓が左手の石碑です 右手の石碑が昭和四年に二代目實川延若が寄進した斎の墓で 宇治北山墓地の斎の墓を模して作られたものだといいます

お寺を訪ねた時は20人ばかりの団体の方が見学されているところでした 
当然のこと斎とお紺の墓は見ていかれるのですが 
中央に鎮座する地蔵さんには目も止められず 
少し残念におもいました    

さてその中央の地蔵さん 龕部だけが残された六地蔵石幢です
無銘ながら室町末の造像で 四角く彫り窪められた中に薄肉彫りされた地蔵さんです 
よく残っていて持物を持つ様子もよくわかります 
地衣類に覆われていない面は閃緑岩の冷めた色がとても美しくみえます

参考書籍

「伊勢市の石造遺物」P168 伊勢市教育委員会  

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